こどもの育児、発達、病気について

小児科医として、県立こども病院神経外来の経験から、育児や発達や病気についてのエッセイです。
  1. 育児:『子育てに一番大切なもの』
  2. 発達:『注意欠陥多動症ADHD』多芸多才の素質 
  3. 病気:『夜尿症』
  4. 病気:『起立性調節障害OD』
  5. 予防:『虚弱体質と小児疳症(疳の虫)』
  6. 発達:『自閉スペクトラム症ASD』
  7. 発達:『注意欠陥多動症ADHD』の特性を生かすには 
  8. 病気:『こどもの便秘体質』 

『子育てに一番大切なもの』
お金が無くても、父親の協力が得られなくても、お母さん次第で素晴らしい子は育つ

「鳶が鷹を生む」ということわざがあります。まれに起きる奇跡でしょうか? 野口英世のお母さんは、明治時代のことですから、無学で字もろくに書けなかったけれど、母親の深い愛情によって、世界で活躍する素晴らしい偉人を育てました。子どもは母親の姿を見て育つものです。

こどもの発達は、その生育環境に大きく左右されます。生まれて物心がつくまでが大切です。うちの子は血統書付きとか言いますが、これは音楽が好きとか、本が好きとか、スポーツが好きというような親の作る環境によって、その分野の才能が伸びていくということです。

ところが、大脳生理学的に見ると、乳幼児期は脳の最大の成長期なので、どんなに素晴らしい知識を詰め込んでも、それを繰り返さなければ、すぐに忘れてしまいます。大人の過去の記憶をたどると、ほとんどの人が小学1年生の頃までしか覚えていないようです。
これは、記憶をつかさどる神経回路が日々成長を続けて新しい回路に置き換わってしまうためで、同様の現象は初老期認知症のお年寄りの脳にも認められます。脳の神経回路がどんどんと枝を伸ばし続けているときは、記憶をしても、あらたに伸びた神経回路によって過去の記憶がかき消されてしまいます。
このような状況下では、学び続けると言うことしか解決策がありません。子どもと認知症の老人の大きな違いは、常に大きな好奇心を抱いて、あらゆる環境から学び続けているか、一日中、ぼーっとして暮らしているかの違いです。

従って、幼児教育というのは、何を勉強するかという勉強内容や知識そのものよりも、どのように楽しくおもしろく興味を持って周囲から学び続けられるかという、「何からでも学ぶ習慣」を身につけることが一番大切であり、無理に知識を増やそうとしなくても、そのような習慣がつけば、それで良いのです。

毎日、本が好きでたまらなくなるまで楽しく本を読んであげ続けるとか、一つのおもちゃをいろいろに工夫して遊ぶことの喜びを何度も繰り返すとか、はめ絵のパズルで物事を完成させることの楽しさを覚えるとか、お手伝いをしたら誉められてとてもうれしかった経験を増やすとか、いやなことでも我慢をしたらとても誉められたとか、ちょっと工夫をすれば、いくらでもポジティブな習慣を付けることができて、こどもの将来を素晴らしくする可能性が開けてくるのです。

自分の子が、将来、本当に素晴らしい人になってほしいと願い、その子の性格や心を素晴らしくしたいと思うなら、脳が急速に発達する乳児期から幼児期にかけて、素晴らしい心の習慣のつく環境をいっぱい与えることです。
これは、知識を与えることではないのでお金がかかりません、と言うより、むしろ、物に不自由している方が、その分、一生懸命に生きる親の姿を見せることができるし、いっぱい心を工夫できるので、野口英世のお母さんのように、忍耐力と愛情に満ちた、本当に素晴らしい子育てが出来るのです。

お母さん方が描く素晴らしい子のイメージについて質問すると、「優しい子、明るい子、積極的な子、思いやりのある子、勇気のある子、楽しい子、向上心のある子」など、様々な答えが返ってきますが、人として最も大切な素晴らしさとは何でしょうか。

まず第一には愛情でしょう。
子は愛の結晶といいますが、愛があれば人は感動し、動物もなつき、草木もよく育つそうです。思いやりも、優しさも、すべて愛情から発したものです。しかし、誰にでも、泥棒にさえ、愛の心はあります。泥棒の愛はとても小さくて、他人が困っていても自分だけ満足すればいいという愛ですが。
従って、親が子に素晴らしい人になってほしいと願うとき、その親の見せる愛情の深さ(細やかな気配り)と大きさや広さ(おおらかさ)が大切だとわかります。

現代社会は、欧米の資本主義が世界中に広まり、個人主義のはびこる、いやな時代になってしまいました。しかし、そのような世界的風潮の中にあっても、日本という国は、ほんとうに素晴らしい愛情に満ちた国だと思います。四季折々の美しい大自然を生活に取り入れて、自然とともに生きてきた日本人は、いつしか「一寸の虫にも五分の魂しい」というように、どんな些細な物にも命が宿っていると考えて、森羅万象全てに対して愛情をもって大切にあつかおうという心を持つようになり、繊細で気配りに満ちた美しい文化と歴史風土を培ってきました。
たとえば、山で木を切るときに、まず山の神にことわり、切り倒す木にも話しかけて、切り株の脇に必ず次の苗木を植えて、木霊(こだま)を苗木に移してから切ったそうです。また、茶道の経験のある方ならご存じでしょうが、軽い物は重々しく大切に扱い、重い物は軽やかに生きているように扱うのが極意とか伺ったことがあります。

また、日本人は、食事の時に何気なく「いただきます」というあいさつをしますが、人は他の生き物の命をいただかないと生きていけないから、その生き物たちに感謝の愛情を示して、ありがたくいただくのだそうです。

乳幼児には、生物と無生物の区別がありません。お人形ごっこや絵本が好きなのは、目に映る全ての物が自分と同じように生きていると感じているからです。 「靴下さんが散らかったままでかわいそう」とか、「お口に入れたら、ご飯さん喜んでくれるかな?」とか、「障子さんが穴があいて、えんえん泣いてるよ」とか、「お月様、こんばんは、夜道を照らしてくれて、ありがとう」という世界が子どもの世界です。
ですから、お母さんが子どもの目に映る全てのものに対して、広くて大きく深く細やかな愛情を注ぎ、ディズニーの「美女と野獣」の食器のダンスのように、全てのものに命が宿るというスーパーメルヘンの世界を常に忘れずに大切にしていけば、深く大きな愛情を持った子が育っていくのではないでしょうか。

次に人として大切な心は何だと思いますか。私は、愛情の持続力だと思います。どんなに愛が深くて大きくても、台風のように瞬間風速的で長続きしなければ、何もなりません。物事が成就するまで愛を注ぎ続ける持続力こそ、人として最も尊ばれる心かもしれません。それには勇気と努力と、それを支える忍耐力が必要です。いつの時代でも、人が精一杯努力する姿は、大勢の人々を感動させるものです。

つまり、幼児にとっては、愛情を広く大きく持続させるために「がまん」する心を育てることが大切です。パズル遊びや日々の生活を通して、「何でもがまんして頑張り続けると、素晴らしい成果が得られるのだ」という小さな成功経験を何度も繰り返し経験させてあげることが大切だと思います。この経験の積み重ねによって、勉強でも仕事でもスポーツでも、自信を持って前向きに何でもこなせる万能の人となるために基本となる大切な心が育っていくのだと思います。

はじめの内は、ちょっとでも我慢できたら「我慢できて、えらいね」と誉めてあげるだけでいいのです。

松下電器を創業した松下幸之助も、「自分は今までに一度も失敗したことがない、成功するまで、止めずに努力し続けたから」と述べていたそうです。

福島県の猪苗代湖畔の野口英世記念館に「忍耐の碑」というのがあります。私事で恐縮ですが、私は、中学二年生の時に、その碑に出逢い、「忍耐は苦し(にがし)、されど、その実は甘し」という言葉にとても感動しました。その当時、私は学校が嫌いで、通信簿の成績はオール3でした。勉強(忍耐)はいやだけれど、実が甘いのなら、野口博士の言葉を信じて頑張ってみようかと考えたのです。その言葉の書かれた絵皿を買ってきて、机の前に置きました。
夏休みに発憤して、七教科高校受験問題集というのを最後まで全部やり遂げました。といっても、ほとんど答えを見ながらの丸写しでしたが。すると、二学期からの全ての授業や試験が「どこかで見たぞ」というものばかりで、とても簡単なものに見えてきたのです。担任の先生は、私が突然に全科目の成績を上げたので驚かれていました。

従って、今子育てをしているお母さんの皆さんが、常に愛情と忍耐力を日々の生活のあらゆる場面で実践していけば、必ず素晴らしい子が育つと思います。野口英世のお母さんのように、たとえ、経済的に大変でも、お父さんや家族の理解を得にくい家庭でも、どんな境遇でも、お母さんさえ明るく元気に愛情と忍耐に生きていれば、貴方のお子さんが確実にお母さんの心をコピーして、素晴らしい子に育っていくはずだと思います。
お母さんの大愛と忍耐力で、ぜひ素晴らしい実を結実させてくださいね。

川嶋 健吾

『注意欠陥多動症ADHD』
落ち着きのない子は、意欲の固まりで、多芸多才の素質があります。

Q.様々なことに興味を持つのは良いのですが、熱しやすくて冷めやすく、好きなことには時間を忘れて集中するのですが、総じて長く集中できません。落ち着きが無く衝動的で、思い付いたことを直ぐにやりたがります。

A.幼児期にじっとしていられないのは「元気でやんちゃな子」といわれますが、小学生になっても同じ状態が続いていると「困った子」と評価が変わります。
年齢不相応に集中力のバランスが悪く、衝動的で多動な傾向があり、実際に生活上に支障をきたしている事実が、7歳未満から認められる場合に、注意欠陥多動症ADHDと言います。

 診断は関わる人の評価で決まるので、客観性を持たせるために、自宅と学校など2カ所以上で評価が一致することが必要です。
有病率は学童で3~5%、20人に1人がADHDということになります。「窓ぎわのトットちゃん」を書いた女優で国連大使の黒柳徹子さんもADHDですが、消防士やERドクターなどの職を選ぶ人にも多いと言われます。

発達人類学的には狩猟民族のなごりだと言われ、計画を立てて一つのことにじっくり取り込むことは苦手ですが、複数のことを同時にこなしたり、突発的な出来事への対応が得意で、変化を楽しんでいる様にも見えます。最後までやり遂げて後片付けをする習慣さえ付けてあげれば、多芸多才の素晴らしい人になれます。
そのために気持ちを安定させて集中力を高めるお薬もあり、こどもの疳の虫に使う漢方薬で肝っ玉を養い、忍耐力を高めてあげることも有効です。

『夜尿症』
西洋薬だけでは中止後6-7割が再発します。

Q.連続して失敗しない日もあるのですが、最近は、毎晩、夜尿が連続しています。小学校3年生なので、そろそろ治って欲しいです。

A.夜尿症は、「5歳を過ぎて、1か月に1回以上の就寝中の尿失禁が3か月以上続くもの」で、小学校低学年では10人に1人、高学年では20人に1人にあり、大人で発症する場合は、ほとんどが睡眠時無呼吸症候群に伴うものです。
 原因は、①夜間多尿、②膀胱機能の未熟、③睡眠覚醒の問題の3つがあり、小児の場合は6-7割が夜間多尿です。尿は、「水分を飲んで約2時間後に尿になる」という法則があるので、寝る2時間前までに夕食を済ませて、その後の飲水を控えれば、それだけで夜尿が減ります。

 治療は、尿意を抑えて膀胱容量を増やす膀胱訓練、尿失禁を知らせるアラーム療法などがありますが、夜間に尿を作らないようにする抗利尿ホルモンの水なしで飲める錠剤があるので、これを寝る前に飲めば、7割が改善しますが、中止すると6-7割が再発します。

 再発を防ぐためには、漢方薬の併用がよいのですが、詳細は、チャイルドヘルスという雑誌に投稿した記事があるので、リンク先のPDFを見てください。小児科医や小児の健康に係わる専門家へのアドバイスとして書いたものですので、多少難しい表現がありますが、お許しください。

『起立性調節障害OD』
こどもはよく立ち眩みやめまいやだるさを訴えることがあります。

Q.うちの子は朝寝坊で、立ちくらみやめまいや頭痛を訴えることが多く、元気がありません。母親の私の体質に似たのかもしれないと思い様子を見ていましたが病気なのでしょうか。

A.起立性調節障害の可能性があります。
これは思春期に多い自律神経反射の不安定な状態で、立ちくらみやめまい、朝起き不良、倦怠感、動悸、頭痛、腹痛などを伴い、起立すると症状が強くなり、午前に強く夕方に改善し、夜には目が冴えて入眠困難を伴います。ODの診断基準によれば、軽症を含めて小学生の約5%、中学生の10%がODです。その約半数で母親や家族にも類似の症状がみられますが、小児では身体症状だけでなく焦燥感、気分の落込み、イライラ感(易怒性)や集中力低下を伴うこともあり精神的な配慮も必要です。

治療はまず自律神経機能を高めることから始めます。毎日15分以上の運動を行い、午後からの規則正しい生活で午睡せずに11時迄に就寝し、暑気あたりしやすいので入浴は短時間にして、食事をしっかりとることが大切です。
これだけで改善しない場合は、自律神経調節薬を併用しますが、胃腸虚弱体質の子が多いので、漢方薬も良く効きます。朝鮮人参茶や朝鮮人参を含む胃腸を丈夫にする漢方薬によって全身の新陳代謝が高まり、昼食後の眠気やだるさがとれて、めまいを起こしにくくなり、疲れにくくなって元気になると、意欲がわいて、イライラや落ち込みも改善されます。

『虚弱体質と小児疳症(疳の虫)』
こどもは元々、胃腸と心と肝と腎が弱いので、漢方で元気にするとよいですよ。

Q.うちの子は神経が過敏なのでしょうか、ちょっとしたことで直ぐに切れてイライラと怒り出します。

A. 子どもは様々な不安を抱えて生きています。
生まれて最初に出会うのは夜の暗闇の恐怖と目醒めた時に母親が見えない不安です。夜泣きや寝起きにぐずることが多いと、自律神経が不安定となって腹痛を起こしやすくなったり昼間からイライラして疳の虫が騒ぐのです。

子どもに共通する漢方的特徴として二余三不足があります。五臓の肝心が機能亢進して、脾(膵臓)肺腎が機能低下しているので、

身体的には貧血気味で疲れやすく、精神的には上に書かれている通りで、全ての子どものスタートがこれなので、子どもとはこんなものだと理解して、少しでも忍耐力や勇猛心や向上心が持続するように、工夫しないといけないのです。

それを母親がストレスと感じていると子どもに影響して悪循環が始まります。疳の虫に効果のある漢方薬、抑肝散は昔から母と子が一緒に飲む母児同服が良く効くと言われています。3歳までは母とのスキンシップが極めて大切で、母子愛着関係と言いますが、このスキンシップによってオキシトシンが分泌され、愛情や安心感が育つのですが、それが不足すると、不安感が膨らんで神経過敏となり、イライラと怒りっぽくなります。

子どもは素直で従順で体力がないため、様々な環境の変化や食事の影響を受けやすく、両親の何気ない冗談や、親や周囲のイライラした言動や対応に強い不安や恐怖を抱くことがあります。

お茶やコーラやチョコなどに含まれるカフェインを摂りすぎたり、魚肉より獣肉を多く食べ過ぎて野菜不足になっても、神経が過敏になるのでイライラと切れやすくなります。

漢方は肉体と精神を陰陽一体のものと考え、胃腸が弱いと意欲が減り、胸が悪いと悲しみ、腎が弱いと恐がり、肝が弱ると癇癪持ちで忍耐力が弱り、心が弱ると精神不安になるので、精神の問題は体調を整えることから始めると良いと言われます。愛情をもって不安を取り除く工夫をしながら、食事や漢方薬で体調を整えていくと疳の虫が鎮まります。

『自閉スペクトラム症ASD』
神経発達症の中核で、その特性のために生きづらさを感じる子達で、漢方薬で軽減できることがあります

Q 2歳になりましたが、言葉が遅くて、眼を合わせようとせず、独り遊びが好きで、おなじことを繰り返しています。

A 発達に問題があるかも知れないと気が付くのは、1歳から2歳くらいの頃が多いのですが、少しでも気になるときは、早めにご相談ください。漢方生薬の中には、 動物を用いた薬理実験で、学習能力を改善して発達を促す作用が認められたものがあります。当院ではそれらのデータを参考にして、幼児が飲める漢方薬を工夫して用いています。

 近年、アメリカやカナダ、日本などでASDが年々増加して、8歳の時点で1,000人に16人くらいの頻度と言われます。一般的にこのような増え方をする病気の場合は、何らかの環境要因が係わっている可能性を考えます。

 漢方医学は気象、心理、生活の環境要因のストレスを病因と考えているので、ASDが漢方薬で改善できるかも知れないと思い、10年以上前から様々な漢方薬を試し、脳内のセロトニン神経やオキシトシン神経の働きが改善できる可能性がありそうだと思える症例を経験し、それらを様々な角度からまとめて、数年にわたり漢方の学会で発表してきました。

 最近の科学的な研究からも、脳の前頭前野の機能不全があり、セロトニン神経やオキシトシン神経の働きを高める薬物で改善が見られたというASDモデル動物の実験が報告されています。脳の扁桃体や交感神経の過剰興奮による不眠やパニックなどを、漢方薬で改善できたという論文や本も出ています。

 もともと漢方薬は子どもの疳の虫や夜泣きに使われてきた歴史があります。その中のいくつかの漢方薬をしっかり長く飲むことで、ASDの視線回避やこだわりが軽減して、コミュニケーション能力が改善することがあります。目安は半年から1年くらいで、効果があれば継続すると良いようです。

『注意欠陥多動症ADHD』の特性を生かすには
低身長と受験の悩み 2019/11/23

Q:  高校2年の息子は中学2年にADHDと診断されました。 薬の影響かどうか、中学入学後から身長が伸びず、本人の中で最大のモチベーション低下につながり、服薬をやめたいと言い出しました。添付文書の「成長遅滞」の副作用を見て身長が伸びないのは薬のせいだと思ったようです。
 現在の薬が効果が出ているのかは不明です。食欲のなさや便秘などの症状もあり、漫然と続けることに疑問ですが、中止することで日常の困りごとが多くなるのではないかと思っていたところ、漢方薬による治療があると知りました。
 病院では不注意優勢型でワーキングメモリーに問題があると言われました。 学校の成績が悪く、落とし物・忘れ物が多く、時間管理や朝の起床に問題があります。大学受験を控えていますが、本人は具体的な希望も持ち合わせておらず、学習にも身が入らない状況です。
漢方薬による治療の可能性はありますか。

A: まず身長ですが、現在高校2年生であれば、骨の成長に関係する骨端線が閉じ始める頃かと思います。したがって、現在の身長を受け入れるという選択がベストと思われます。
 ADHDの薬の副作用は、食欲低下が主なもので、それに関連して低身長となるので、しっかり食べられていればもう少し伸びていたかも知れませんが、今後、薬を中止しても、得られる効果と損失を比べれば、止めない方が良いかもしれません。最近は、成人のADHDが話題になり、薬の適応年齢が拡大されていますから。

 漢方薬ですが、ADHDの二次障害と思われる易怒性や不安緊張などには適応可能ですが、主症状である不注意や衝動性や段取り力の低さは、漢方薬より西洋薬の方が改善できると思います。
 ADHDは歴史的に、エジソン、チャーチル、ウォルトディズニー、日本では黒柳徹子さんなど、多くの有名人がおり、医師や消防士など、予定の立たない仕事に生きがいを感じるような職業に従事する人に、ADHDが多いようです。
 ADHDは障害では無く特性であり、移り気が多い、好きなものに強く集中するなど、問題はありますが、多芸多才の素質があるので、途中で投げ出さずに最後まで完成させれば、その世界のトップリーダーにもなれる素質があります。

 学習に実が入らないのは、モチベーションが不足しているからで、ADHDが原因ではないと思います。ADHDの人たちは、好きな道であれば極めたいという、強いモチベーションを持ち続けることが得意です。小さい頃から、親と一緒に困難を越えてきたという、達成感のある感動的な経験が多ければ多いほど、チャレンジ精神がわいてきて、受験にも対応できるようになると思います。
 とにかく、好きなことを徹底して思いっきり取り組める環境を与えてあげることが良いと思います。できれば、ゲームなどの受け身的なものではなく、クリエイティブなことに気持ちが向かうと、さらに良いと思います。

 漢方には心身一如の法則があり、意欲や気力、情熱などの心は、身体的には胃腸と関連し、漢方薬で胃腸虚弱を改善すると、意欲が湧いて、心も元気になってきます。
さらに、家庭内での明るく楽しい話し合いの中から、人生の意義を考えたり、家族や社会に対する感謝の心、愛情、使命感などが持てれば、漢方薬の効きが更に良くなると思います。
 また、自分を含めて家族や社会や周囲の人々を、必ず、絶対、幸せにしたいという思いを高め、強く持つことができるようになれば、マルチタレントの素質のあるADHDという特性を、最高に生かすことができるのではないかと思います。

 漢方医学は医食同源と言いますが、生活全般と心身の健康が密接に関連していると考え、食事や日頃の考え方まで示唆に富む知恵の活用が、歴史的に実践されてきた医学ですから、様々に活用して、幸せになってくださいね。

『こどもの便秘体質』
アレルギー体質、イライラ性格、慢性炎症と関連

Q.物心ついた頃からずっと便秘で、腹痛を訴えるので、浣腸で出そうとすると、とても嫌がって逃げまわってばかりです。便意があっても我慢してウンチを出そうとしません。

A. こどもの便秘体質は、そのまま放置せず、必ず治してあげてくださいね。アレルギー体質やイライラ性格、ストレス耐性、成人の生活習慣病や大腸癌、認知症にまで影響します。

 生まれたばかりの赤ちゃんが便秘することはありません。それは、お母さんの母乳によって、腸内が善玉菌の乳酸菌で弱酸性に保たれているので、便が大きく固まらないからです。
 離乳食が始まると、大人のような臭い形のあるウンチになって、硬くなりすぎると、お尻が切れたり排便痛を感じて、排便を我慢するようになり、便秘するようになるのです。それは、食事の内容が変化して、悪玉菌が増えることが原因です。
 善玉菌と悪玉菌の話は、アレルギー、アトピー、喘息、花粉症コラム 1腸の健康が全ての基本で詳しく書きましたので、読んでみてくださいね。
 欧米化した高蛋白・高脂肪食を多く食べる生活が、悪玉菌のエサを増やして、腸内がアルカリ性になって固い便になり、腐敗菌も増えて、アレルギー体質や慢性炎症体質を助長してしまいます。

 善玉菌を増やして便秘体質にしないためには、3歳くらいまでに、野菜大好き、豆大好き、味噌汁や微妙なダシの味が大好き、煮物が大好きになるように、ものごころが付く前から、離乳食を天然の和風ダシで下味を付けたり、カボチャやお芋、お豆のペーストや、大根や人参などの根菜類を多用するなどして、離乳食の食物線維を増やしてあげてください。
 野菜が嫌いになる子は、その固いすじばった食感や、カリウム分による苦味などで嫌いになることが多いようです。離乳食の頃から、人参やカボチャやブロッコリーなど、赤や黄色や緑など色のハッキリした野菜のペーストや柔らか煮を、意識して多く食べさせてあげていれば、まず、野菜嫌いになることはありません。その色や、食感を柔らかいままで、3歳まで続けてあげれば、生涯、野菜大好きになれるはずです。

 3歳を過ぎて、便秘体質になってしまっている子には、小豆アズキや寒天、コンニャク、海草など、緑黄色野菜にこだわらず、まず食べられる食材をできるだけ多く摂ることで、腸内の食物線維を増やして、それをエサとしている善玉菌を育てることが大切です。

 当院では、健康保険で承認されている生きた善玉菌をお薬として処方して、それでも便性が固い場合は、小児の便秘に適応のあるオリゴ糖やマルツエキスを、善玉菌のエサとして処方しています。また、便秘が長引いていて、腸の動きが悪くなっている場合は、乳児でも飲める甘い漢方薬で、腸の動きを促すこともしています。
 それでも出ない場合には、便秘に保険適応のある西洋薬であるラキソベロンや酸化マグネシウム(重カマ)などの緩下剤を一時的に使いますが、下剤を長く使うことは、できるだけ避けたいと思っています。
 思春期の便秘は、下剤が必要な場合もありますが、下剤で腹痛を起こしやすい子では、自律神経の不安緊張から生じるものもあるので、はじめから下剤を使うことをしないで、精神安定効果のある漢方薬で様子をみることもよくあります。

 便秘体質は、漢方医学では、血の流れが滞って腫れや痛みや慢性炎症を引き起こす『瘀血』になる重要な原因の一つと考えられています。ぜひ、こどもの内に、便秘体質を治してあげてくださいね。

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