コロナの自宅療養こそ漢方を!(9月8日改訂)

デルタ変異株の猛威を漢方でしのげる可能性あり!

from Google 検索, Aug.2021

 グーグルでコロナの治療を検索すると、このように『軽症では経過観察、必要な場合に解熱薬などの対症療法、呼吸不全になったら・・・・』と書かれているので、自宅療養の方々は、解熱薬を主とした対症療法で治療されていることと思います。
 今までの従来株ならこれでも良かったのでしょうが、今大流行している変異株は、従来株より早期から重症化しやすく、解熱薬だけで経過観察する自宅療養は、危険性が高いと思います。

  9月5日の全国保険医新聞に、国立国際医療研究センター長の大曲貴夫先生の『新型コロナの最新知見』が掲載され、『治療としては①ウイルスの増殖を抑えることと、②活性しすぎた免疫系(サイトカインストームなど)を免疫調整で抑えることが鍵になる。』と書かれていました。
 大曲先生が治療の鍵とおっしゃったこの2つの治療機序は、 感冒用漢方薬の インフルエンザウイルスに対しての細胞培養実験や動物実験で、すでに証明されています。さらに、この漢方薬のウイルス増殖抑制と過剰免疫抑制は、ウイルスの種類と無関係に、どのウイルスにも効果があることも実験的に証明されています。

 ヒトの臨床でも、 漢方服用直後から筋関節痛が軽減したり、 抗原検査陽性のインフルエンザが漢方薬だけで一晩で解熱したという多くの経験があります。約1800年前に著された『傷寒論』の時代から現代まで、感染症のパンデミックと戦ってきた、漢方薬の歴史的エビデンスを、ぜひ自宅療養の治療に活用していただきたいというメッセージを強く発信したいと思います。重症者や後遺症を一人でも減らすために。

  漢方の話の前に、なぜデルタ株が怖いのかの確認です。

★感染力★ 従来の新型コロナウイルスよりも、感染者の体内で増殖するウイルス量が1000倍以上多くなり、従来株よりも感染してウイルスが検出できるまでの期間が約2日短くなっていて、ウイルスを排出する期間も18日と長くなっているそうです。
 従来のものは1人の感染者から1.4~3.5人が感染しましたが、デルタ株は5~9人に感染し、空気感染する水痘(水ぼうそう)と同じレベルで、これまで以上に手洗い、うがい、マスク、三密予防をしっかり行う必要がありそうです。
★重症化率★ 従来型に比べて、世界的に入院リスクが2~3倍、死亡リスクが2~5倍だそうです。
 体内ウイルス量が従来のものより1000倍以上多くなるのですから、感染細胞数が多くなり、炎症性サイトカインストームが強く生じて、炎症が短時間で激しくなっているからだと考えられています。

ほぼ全てのウイルス感染の特効薬は漢方薬!

☆オートファジー活性化でウイルス量を早期に減少☆ コロナウイルスで確認された訳ではありませんが、感冒用漢方薬である麻黄湯に、細胞内リサイクルシステムであるオートファジー機構を活性化してウイルスを消化分解して消滅させてしまう働きがインフルエンザウイルスやヘルペスウイルスで認められています。

別冊 医学のあゆみ 漢方医学の進歩と最新エビデンス 2013年 より


 このグラフは、シャーレで培養し数百万個に増えたインフルエンザウイルスに、麻黄湯を加えると、濃度依存性にウイルス量が減少し、16倍濃度で24時間後に、数十個、つまり10万分の1に ウイルス量が減少したことを示すものです。
 隣のラニラミビル(イナビル®)では、最も高い100倍濃度でも数万個に減っただけでした。
 イナビル®は1回で治療を終えることのできる抗インフルエンザ薬として有名ですが、体内でウイルスが広がるのを押さえているだけなので、ウイルスを消滅させることができる麻黄湯の方が、はるかにウイルス量を減らせたのです。
 この効果は、ウイルスの種類によらないものなので、感冒様症状で発症するコロナウイルスにも活用できるはずです。

☆炎症性サイトカインストームの鎮静化で早期に解熱、重症化軽減☆ インフルエンザウイルス感染実験から得られた葛根湯のデータですが、感冒用漢方薬に多く使用されている麻黄、桂枝、生姜の順に、炎症性サイトカインストームIL1αの強い抑制効果が認められ、その成分として、桂枝(シナモン)に多く含まれるシンナミル化合物が同定されています。

感冒に対する葛根湯の作用機序
 治療学 Volume 40, Issue 4, 413 – 416 (2006) より作図


 当院でも毎日コロナワクチン接種を実施していますが、日頃からシナモンを含む漢方薬を飲んでいた人には、副反応の発熱が軽い印象がありましたし、日頃からカゼをひきにくくなったという方が多いようです。炎症性サイトカインが抑制されているからだと思います。
 IL1αが熱を出せ、鼻水を出せ、咳をしろ、など一連の炎症症状の引き金になっているサイトカインなので、ここを止めれば、全身の炎症状態が鎮静化できるのです。
 熱産生を止めるだけの鎮痛解熱薬では、熱が下がっても、他の部位への炎症性サイトカインの作用がそのまま残るので、解熱薬だけで経過をみることは、お勧めできないのです。

自宅療養中に安全に漢方薬を使うための重要事項

 感冒用の漢方薬には、麻黄湯、葛根湯、桂枝湯、桂麻各半湯、小青竜湯、参蘇飲、香蘇散など、感冒の初期に用いる主なものだけ列挙しましたが、他にも、こじれた時に使用するものや、気管支炎や肺炎、扁桃炎、副鼻腔炎や蓄膿症、感冒性胃腸炎に使うものなど、本当に、数多くの感冒用漢方薬があります。簡単に言えば、漢方の古典『傷寒論』に記載された全ての処方が感冒薬なのです。

 それぞれの処方には『証』と呼ばれる適応症があります。これを使い分けられる能力を認められた医師が漢方専門医として日本東洋医学会に登録されています。そういう先生がいらっしゃれば、ご相談いただいて、適切な漢方薬を選んでもらってください。

 漢方専門医に相談できない場合、安全に漢方薬を使うために、大切なルールがあります。
まず麻黄についてです。ウイルス量を減らすためには、麻黄を含む漢方薬が良いのですが、麻黄という生薬には、エフェドリンが含まれていて、強力な交感神経刺激作用があるため、緑内障の眼圧を高めたり、前立腺肥大を悪化させて尿閉にしたり、高血圧が悪化したり、強い動悸がしたり、不眠や食欲不振になったり、飲み過ぎると手先がしびれてきたりするので、医師の指示のないところで、規定量以上は服用しないでください。

 次に、汗についてです。高熱になっても汗をかかない状態で、筋関節痛などもあれば、躊躇無く麻黄湯を使用してください。葛根湯でも小青竜湯でも、麻黄を含む製剤ならなんでも良いです。
 汗が出て解熱傾向がみられるまでは、1回の服用量は規定量として、服薬間隔を短くして飲んでください。さーっと炎症がひいていく感覚があれば、効いている証拠です。初めのうちは、この感覚が次第に薄れてくるので、効果が薄れてきたことを体で感じたとき、また節々が強ばって痛み出したとき、熱が上がりはじめたときに、次の服用をしてください。それで、漢方薬の2日分を1日で服用(約4時間毎に6回)してもかまいません。
 汗をかくことがとても大切なのですが、汗が出始めたら、漢方薬を半量以下に減らすか、別の弱い漢方薬に変更します。決して玉のようなダラダラした汗を出してはいけません。ジワッとにじむ程度の汗で十分です。玉のような汗が出たら、麻黄を含む漢方薬を飲んではいけません。これを必ず守って服用すれば、薬局で購入した漢方薬でも、安全に使えます。

漢方の初期治療の開始時期と最低継続期間
 PCR検査が陽性になるのは、当初は頭痛や寒けや発熱、筋肉痛などで発症してから4日目頃と言われていました。デルタ株は発症してウイルス量が従来株より1000倍多いので、発症後2日目頃と言われています。
 漢方薬を飲み始める時期は、PCRの結果を待っていては遅すぎます。寒けや熱が出たら、真っ先に感冒用漢方薬を飲んでください。24時間ほどで減少に転じて、症状が軽くなってくると思います。ウイルスに対する自分の免疫抗体を作り始めるのが発症後4日目ころですから、最低、4日間は麻黄を含む感冒用漢方薬が必要です。1週間ぐらいは飲んでいた方が良いと思います。

 これで、急性期が乗り越えられれば、重症化の危険性がかなり軽減できると思います。その後に起きてくる胃腸症状である食欲不振や下痢や腹痛(胸脇苦満)、痰の絡む咳などは、別の漢方薬が必要ですが、初期のウイルス量さえ減らすことができれば、急変する可能性が大きく減らせるので、まず大丈夫だと思います。

※注意書き:通常、当院では、具体的な漢方処方名をホームページに書くことは決してありません。漢方薬には『証』適応症があり、使い方を間違えると効かないだけでなく副作用がでることもあり、責任が取れないからです。
 しかし、今回は、国の緊急事態であり、自宅療養中に他院へ受診することが不可能と思われ、療養中にできるだけ早期に漢方薬を服用する必要性があるため、重症者を一人でも減らしたいという思いから、例外的に、漢方薬名を挙げて、お勧めするものです。
この情報を利用されて体調が悪くなった場合、責任をとれませんので、必ず主治医と相談の上で、この情報をご活用ください。

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