新型コロナウイルス感染症のパンデミックに思うこと

 令和2年5月17日、日本では、ようやく感染者数の減少傾向が見えてきましたが、まだ余談を許さない状況で、全世界で30万人以上の人が亡くなられ、まだ猛威を振るっています。日本でも貴重な人材が亡くなられており、衷心から哀悼の意を表したいと思います。

 私は、東洋医学を通して東洋哲学を学び、易経、孔子、老子、孟子などの古典に触れ、色々と学び、様々な体験を繰り返すうちに、あらゆるものに栄枯盛衰があり、諸行無常だと学びました。また、四季は春夏秋冬を繰り返し、日は昼夜を繰り返し、人も輪廻転生を繰り返し、陰陽循環の法則が例外なく存在することを確信するようになりました。 ですから今回の新型コロナウイルスのパンデミックも循環法則によって必ず終息すると思いますが、パンデミックそのものが陰陽循環するので、新しいパンデミックに備える必要があります。

 2009年の豚インフルエンザのパンデミックの時、世界的には多くの人が亡くなりましたが、日本だけは、抗インフルエンザ薬が潤沢に使えて問題ありませんでした。
 この時は、すでにインフルエンザ診断キットがあったので、当院の豚インフルエンザに罹患した人達の中で、「感染前に漢方薬を服用していた人は有意に初発症状が軽かった」というデータを日本東洋医学会に発表しました。

 今回の新型コロナウイルス感染のパンデミックは、豚インフルエンザの時より重篤で、致死率が2-3%と言われ、高齢者や持病のある方はもっと高率です。
 現在、日本東洋医学会全体で、漢方の臨床効果を確認しようと動いています。当院でも簡易な抗原診断キットが使えれば、漢方薬の臨床効果を確認できるのですが、今は、PCR法によって特定の施設でしか確定診断ができないため、漢方効果の確認は無理です。
 しかし、科学的には、ウイルスの種類に関係いなく漢方薬によってサイトカインストームを抑制して重症化を防ぎ、オートファジー機能を高めてウイルスを消去することが証明されているので、新型コロナ感染症も漢方薬で何とかなるのではないかと思います。

 私が最も気がかりに思っていることは、温暖化が進み、デング熱などが台湾から沖縄に迫っている時代なので、もっと致死率が50%と高い鳥インフルエンザのようなパンデミックが、いずれまた繰り返される可能性が高いのではないかということです。
 それでも、致死率50%ということは、二人に一人は生き残る訳ですから、生死を分ける違いは何なのかということを、今のうちに、もっとしっかり、この新型コロナウイルスから学ぶべきではないかと思います。

 今回の新型コロナウイルス感染症は、漢方的には、舌が白膩苔で、強い痰飲状態で、気血水が滞っている人ほど重症化しやすかったと中医(中国の漢方医)が発表しています。さらに瘀血(血液ドロドロで慢性炎症体質)があると、もっと重症化するそうです。

 つまり、これからも繰り返すであろう様々なパンデミックから生き残るためには、ウイルスや菌と直接的に戦う薬だけでなく、日頃から重症化しにくい体質をつくり、自然治癒力を高める漢方の知恵を積極的に取り入れて、医食同源による食生活改善を積極的に行うことが 必要だと思います。

 東洋人に比べて欧米人の重症化率、致死率が高いことが注目されていますが、漢方的にみれば、圧倒的に獣肉食と野菜・穀類摂取量に違いがあるので、「瘀血体質人口」の違いとして十分に説明できると思います。NHKスペシャル「新型コロナウイルス ビッグデータで闘う」でも全身の血管炎体質(瘀血)のある人がウイルス性血管炎やサイトカインストームで重症化するという結果が報告されていると放送していました。
 現在のような 飛沫感染予防を主とする新しい生活様式の切り替えだけでは、不充分だと思います。 当院では日頃から、瘀血体質を改善し、気血水の循環を良くする食材や調理法、免疫力低下を防ぐストレスへの対処法などを指導しています。

 陰陽循環法則から、豚インフルエンザがホップ(序の口)、新型コロナウイルスがステップ(予行演習)、今後起きる致死率50%に近い未知のウイルスがジャンプ(本番)と考えられるので、今のうちにしっかりと、新型コロナ感染症で予行演習をして、学ぶだけ学んで、工夫できるだけ工夫して、次の本番に備えることが最も大切だと考えています。

関連記事