COVID-19による小児や成人の神経後遺症(認知機能障害Brain Fog)の増加

#COVID-19の5類指定しても安心できない科学的理由
 COVID-19は変異する度にワクチン免疫回避しながらパンデミックを続けていて、初期の感染症状が軽くても、SARS-CoV-2ウイルスのクリアランス(除去)作用を行うT細胞を回避する能力が高まったことによって、脳や血管内皮などで持続感染し、神経後遺症(認知機能障害)を起こす危険性が高まっているので、5類指定にしても安心できないウイルスです。

#根拠となる最近の情報
 高病原性コロナウイルスであるSARS, MERS, COVID-19にはいずれも「神経向性neurotropism」があって、神経組織に感染することがわかっています。特にオミクロン株に変異してデルタ株よりも感染力を増してから、小児の罹患死亡者数が一気に10倍を超え、その死亡例の多くが神経症状と循環器症状を呈していました。
 小児へのコロナワクチンは、まだ十分に普及したとは言えませんが、マウスモデルにおける脳へのウイルス血行感染と脳神経細胞死はワクチン接種で抑制できるNat Neurosci. 2023 Jan 9.(doi.org/10.1038/s41593-022-01242-y)という報告がありますから、小児もワクチンを打った方がよいのではないでしょうか。
 オミクロン株に変異してからACE2受容体親和性が数段高まったことと、T細胞回避性が高まってSARS-CoV-2ウイルスのクリアランスが悪くなって持続感染している症例が増えていることが、軽症の若い人でもLong COVID(後遺症)が増加している要因ではないかと思います。
 上気道からSARS-CoV-2ウイルスのクリアランスが遅い場合にbrain fogが生じるmedRxiv. Jan 19, 2023.(doi.org/10.1101/2023.01.18.23284742)という報告があります。また、急性期における抗ウイルス薬ニルマトルビル(パクスロビド®)が後遺症のリスクを低減させるmedRxiv November 05, 2022. (doi.org/10.1101/2022.11.03.22281783)と報告されていますから、当院HPに紹介している麻黄湯などの漢方薬によるウイルス除去への試みも、Brain Fogを予防している可能性があると思います。

#最近の後遺症外来の状況と漢方治療
 当院のCOVID-19後遺症外来でも、最近は、初期感染徴候が1か月近く持続している症例がやや多いように思われます。漢方の原典「傷寒論」に記載された六病位の太陽病期が持続しているので、臨床的にもウイルスの持続感染の可能性が高いのだろうと思われます。このような場合には、漢方薬で速やかに対処することが可能で、1-2週間で残存した初期感染徴候を除くことができます。
 Brain Fogになると、漢方治療をして治ると言っても平均で5か月弱、長い人では治療に1年以上かかっています。

 当院の漢方薬を中心とした感染初期、後遺症初期の対処法で、Brain Fog神経後遺症がある程度防げると思いますが、ワクチンや初期漢方治療を徹底して、神経後遺症Brain Fogを防ぐ手立てを全国に広めないままで、5類指定感染症にしてしまうと、とても大変なことになりそうで、心配しています。

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