COVID-19持続感染と神経後遺症(Brain Fog)を漢方で対処

#COVID-19の5類指定しても安心できない科学的理由
 COVID-19は変異する度にワクチン免疫回避を繰り返しながらパンデミックを続け、現在は日本で第9波が懸念されています。
 初期の感染症状が軽くても、SARS-CoV-2ウイルスのクリアランス(除去)作用を行うリンパ球であるT細胞を回避する能力が高まったことによって、脳や血管内皮などで持続感染しやすくなり、神経後遺症(認知機能障害)を起こす危険性があるので、5類指定にしても安心できないウイルスです。

#根拠となる最近の情報
 高病原性コロナウイルスは今までに3種類流行しており、SARS, MERS, COVID-19の全てに「神経向性neurotropism」が認められ、高率に神経組織に感染します。
 特にCOVID-19の原因ウイルスである SARS-CoV-2 ウイルスは、2022年にオミクロン株に変異してデルタ株よりも感染力を増してから、小児の死亡者数が一気に10倍を超え、その死亡例の多くが脳神経症状と心筋炎などの循環器症状を呈していました。
 オミクロン株は、ヒトのACE2受容体への親和性が数段高まって、リンパ球のT細胞攻撃からの回避性が高まっています。これによってコロナウイルスのクリアランス(細胞内感染除去能力)が低くなって、ウイルス感染状態が長引く症例が増え、初期症状が軽くても後遺症(Long COVID)が出てくる可能性が高まっているようです。
 上気道からのウイルス消失(クリアランス)が遅い場合にbrain fogが生じやすいmedRxiv. Jan 19, 2023.(doi.org/10.1101/2023.01.18.23284742)という報告があります。
 急性期における抗ウイルス薬ニルマトルビル(パクスロビド®)が後遺症のリスクを低減させるmedRxiv November 05, 2022. (doi.org/10.1101/2022.11.03.22281783)との報告もありますから、当院HPに紹介している麻黄湯などの漢方薬によるウイルス除去への試みも、Brain Fogの予防には有効である可能性が高いと思われます。

#最近の後遺症外来の状況とBrain Fogの漢方治療
 当院のCOVID-19後遺症外来でも、初期感染徴候が長引いている人がやや多いように思われます。これは、漢方の原典である「傷寒論」に記載された六病位の太陽病期が長引いている状態なので、速やかに「太陽病期」の治療を行うことで、オートファジー(細胞内のお掃除システム)が活性化されてウイルスが除去されるので、遷延した症状を早く鎮静化させることが可能です。
 Brain Fogになると、自然経過観察では1年以上続くとの報告がありますが、当院の漢方治療データでは、50人中46人(約9割)が6か月前後で回復しています。当院の漢方薬を中心とした感染初期、後遺症初期の対処で、Brain Fog神経後遺症がある程度防げると思われます。

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