感染症の漢方治療(当院治療方針)

感染症の9割はウイルス感染です。
西洋薬には全てのウイルスに効くというお薬はありません。
感冒用の漢方薬は全てのウイルスに効く可能性の高いお薬です。
漢方薬が1~2日で効果がないときに、細菌感染を疑って抗生剤を検討することがあります。

漢方薬の抗ウイルス作用①
 感冒用漢方薬に含まれている生薬『麻黄』>『桂皮( シナモン )』>『 生姜 』の順に、西洋薬と同等かそれ以上の解熱鎮痛作用があります。

 ウイルス感染が起きると、侵入された細胞がインターフェロンを放出して脳に危険を知らせると、脳からシャワーのように大量の炎症性サイトカインが嵐のように全身に降り注いで、「体温を上げろ」「ウイルスの付着した鼻粘膜から鼻水を出せ、クシャミや咳をして追い払え」などと一連の炎症反応を起こして、ウイルスとの臨戦モードになります。
 この炎症性サイトカインが短時間で一気に大量に出ると高熱や頭痛、筋関節痛など激しい症状になります。

漢方薬は、この炎症性サイトカイン分泌を強力に抑えて、一気に燃え上がろうとする大火事を小さな焚き火程度の炎症に鎮めることができるので、熱が下がると同時に、全身の炎症を鎮静化できるのです。

漢方薬の抗ウイルス作用②
 麻黄湯のインフルエンザウイルスに対する研究により、1回の吸入だけでインフルエンザ治療が終わるイナビル®(ラニナミビル)という抗ウイルス薬よりも麻黄湯の方が、ウイルス量を大きく減らすことができます。

 シャーレの培養細胞でインフルエンザウイルスを数百万個に増やしておいて、麻黄湯を加えると、濃度依存性にウイルスを減少させ、16倍の濃度の時に、24時間で10万分の一に減少させることができました。
 ラニナミビルは100倍の濃度で百分の一に減っただけでした。
 古い抗ウイルス薬アマンタジンもラニナミビルと同様でした。

 感染初期の発熱期に、麻黄湯を十分に服用すれば、1日でウイルス量を激減できます。
 この効果はインフルエンザ以外のRNAウイルス、DNAウイルスにも認められるので、新型コロナにも効果があるはずです。コロナウイルスの武漢株の頃は、COVID-19の死亡率はコロナウイルスの量に比例するという研究報告もありましたから、当院では、この結果から、 広く麻黄を含む漢方薬を インフルエンザやコロナだけでなく、水痘、おたふくかぜ、帯状疱疹、水イボ、手足口病、夏カゼ症候群など、様々なウイルス感染の治療に活用しています。

感冒用漢方薬の適応症(証)
 代表的な感冒用漢方薬には麻黄湯、葛根湯、小青竜湯、桂枝湯など様々な処方がありますが、それぞれ適応症(証)が明確に規定されていて、誤った適応で使用すると「誤治(ごち)」になり、副作用などが出るので、服用は漢方専門医にご相談ください。

こじれた感染症への漢方薬
 咳が長引いたり、微熱や弛張熱が続いたりする場合は、『六病位』という病気の流れに従って、当院では、様々なフォロー用の漢方薬を用意しているので、少しでもご心配な時は、遠慮無くご相談ください。