神経発達症(Neurodevelopmental disorder)への対応、自閉スペクトラム傾向は10人に1人の特性

よく十人十色と言いますが、人には様々な性格があります。その性格や感性が一般の人と少し違っていると、なかなか理解されにくかったり、気持ちを伝えにくかったりします。最近は、神経発達症は病気というよりも、神経発達の一つの特性ととらえられるようになりました。

 この特性のうち、社会的に問題になるほど、コミュニケーションがとれなくなった状態をコミュニケーション障害と言い、こだわりと呼ばれる限局的で固執的な行動、関心、活動や、感覚過敏などを認める神経発達症を、自閉スペクトラム症(ASD)と言います。
 その程度は、まさに十人十色で、知的な遅れが全く無く、成人して、様々なスペシャリストとして働いて、活躍している方もいますが、コミュニケーションの困難さから、不安緊張がつのり、社会性を失い、ニートになって、成人しても社会に出られない人も多くいます。

 この状態は、生まれつきの人と、反応性愛着障害(RAD)と言って、乳幼児期に強い虐待を受けて、同様の特性を示すようになる人がいます。
 また、虐待までいかなくても、泣き入りひきつけなど、乳幼児期に強いストレスを感じる状態を繰り返していても同様に、脳の扁桃体という動物的防衛本能が活性化しやすくなり、感覚過敏や不安緊張、こだわりが強くなって、社会性が育ちにくいことがあります。
 成人期のうつ病も、幼児期に受けたストレスのトラウマが残っていると、うつを発症しやすいことがわかっています。

 これらの全てに共通する脳の状態として、脳内セロトニン神経系の機能不全が注目されていて、うつ病に適応のある選択的セロトニン再取込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor:SSRI)が、こだわりの強い強迫性障害や、社交不安症、心的外傷後ストレス障害(post traumatic stress disorder:PTSD)、自閉スペクトラム症に併存する精神症状など、様々な精神疾患に使用されています。

 セロトニン神経には、様々な働きがありますが、交感神経(緊張興奮)のノルアドレナリンと欲求中枢のドーパミンを抑えて、外部から受けるストレスである①不安・緊張・恐怖・易怒性、②欲求不満のストレス、③人に認められないストレスの三つのストレスを和らげる働きがあります。
 また、自分の気持ちや欲望を抑えて、我慢する心を支える神経でもあり、相手の気持ちに共感し、相手を思いやる心を支える神経でもあり、この共感力は、人間ならではのものです。

 自閉スペクトラム症の人たちは、セロトニン神経系が様々に機能不全状態にあることがわかっていますが、脳内の社会性ホルモンであるオキシトシンの点鼻吸入で、症状が改善することが知られています。オキシトシン関連神経系とセロトニン神経系の働きを一言であらわすなら、オキシトシンは『歓喜感動』をもたらす瞬間風速的な神経で、セロトニンは究極の『安心感』をもたらすじっくり型の神経と言えます。

 つまり、これらの事実から、うちの子は神経発達症かな?自閉スペクトラム症かな?と感じたら、RAD(反応性愛着障害:乳幼児期の虐待)のように環境要因でも脳発達に影響があるのですから、子育てによって『十二分な歓喜感動安心感』を与え続けてあげることが、関連する神経の発達を促すことになるのです。常にこの事を心がけて、色々と工夫してみてくださいね。

 このキーワードは、 日本人の 歴史的伝統と風土に培われてきた、日本神道の祭の歓喜感動と、御親神の守護という絶対的な安心感に通じるものです。 だから日本には、 あたたかくて大らかなセロトニン神経優位の国民性が育まれ、藤原先生が『国家の品格』で述べているように「卑怯を憎み惻隠の情を大切にする国柄」になったのだと思います。

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