夏本番に向けての漢方の知恵(令和7年7月)

 今年は関東の梅雨明けは例年に比べてやや早いと予想されています。中旬には猛暑、酷暑が到来しそうです。夏本番の厳しい暑さはこれからですが、「暑邪しょじゃ」によってのぼせやほてり、ねあせ、睡眠障害、イライラ感などを生じやすくなり、湿度も高くなるので、「湿邪しつじゃ」によって、手足のだるさや食欲不振、むくみ、消化不良などを引き起こしやすくなります。

 漢方医学では、夏は、陰陽五行説の「火」、五臓六腑の「心しん」の季節なので、心身のバランスが乱れて、不眠や動悸、不安感がつのることもあります。
 心身のバランスは、胃腸虚弱で悪化しますから、夏は特にお腹を冷やさないようにして、胃腸を元気にする漢方薬で、バランスが取れて元気になります。また夏バテ予防にもなります。

 暑邪に負けないために、冷房は、外気との温度差を5℃以内に保ち、水分補給をこまめに行い、体内に蓄積した暑邪を冷ますためには、ゴーヤ、トマト、ナス、キューリ、スイカ、メロンなど夏野菜や夏の果物が役立ちます。
 湿邪に負けないためには、冷たすぎる氷水やアイスなどの氷冷菓を控えて、油っぽい炒め物や揚げ物を少なめにして、蒸したり煮たりした、消化の良い温かい食事をとるようにしてください。ハトムギやダイズ、アズキ、トウガン、キュウリ、トウモロコシなどの水分代謝を良くする食材も活用できます。

 胃腸が弱いと、気力が萎え、昼過ぎから眠くなったりして、勉強や仕事の能率が落ちたり、水分代謝が悪くなるので、頭痛やめまい、耳鳴、怠さが出たりして体調不良が続き、夏バテが悪化します。皆さま一人ひとりの体質やお悩みに合わせて、漢方診療をしておりますので、気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。
 皆さまが健やかに、そして笑顔で夏を過ごせますよう、心より願っております。