心に寄り添う漢方薬(受験生の心にも)

令和5年(2023年)9月3日に「心に寄り添う漢方薬」というお話を、某漢方製薬の全国の240名の先生方にWeb講演会をさせていただきました。

 人には「心に寄り添うストレス緩和システム:視床下部下垂体副腎系HPA軸 というものがあって、 このHPA軸は、心のストレスを脳の成長に役立てるストレス緩和機能として働いています。

漢方薬の7割に含まれる生薬『甘草』
 実は漢方薬の7割の処方に含まれている甘草という生薬が、このHPA軸による最終分泌ホルモンであるコルチゾール(抗ストレスホルモン)を、肝臓で分解されないように守っています。甘草には肝臓のステロイドホルモン分解酵素の働きを阻害するグリチルリチンが含まれています。つまり、7割の甘草を含む漢方薬のずべてに「心に寄り添うストレス緩和システム」を サポートする働きがあるのです。

漢方医学は『心身一如』のストレス医学
 漢方医学は、精神ストレス(内因)、気象ストレス(外因)、生活(衣食住)ストレス(不内外因)という3つの病因を考えて、気血水の過不足と循環のアンバランスを陰陽太極論で整えて、心身を元氣にしようという医学です。精神と身体を合わせた陽と陰のペアによって太極としての人が生きているので、漢方医学の治療は、「心身一如」とも言われ、心が身体に影響する心療内科的考えだけでなく、身体が心を支える重要な役割をしてます。

漢方医学で最も大切なもの『氣』
 漢方医学では、「氣」をとても大切なものと考えます。どんなに血と水が満たされていても、それだけでは「フレッシュミート:新鮮なお肉」というだけで、生きていることになりません。つまり、 漢方医学では 気血水のお互いの関係を以下のように捉えています。陰である血と水の身体が、陽である氣の心を産み育てて、次第に育って成人になると、氣である心が血水である身体を統帥、統率すると考えているのです。
 つまり、身体を元氣にする漢方薬の全てに、心を元氣にする働きが内在しているのです。

心の陰陽はマインドMindとスピリットSpirit
 漢方医学では、あらゆる次元で陰陽の働きが内在しています。心に内在する陰陽はマインドとスピリットであり、マインドは心の血水、つまり心の栄養と潤い、スピリットは心の氣、つまり心の原動力です。心に豊かで瑞々しい素晴らしいイメージ(マインド)を描いても、心の原動力であるスピリットが不足すれば、実際の身体の行動につながらないのです。西洋医学は、客観視できて分析可能なマインドを主な治療対象にしていますが、漢方医学は、ヒトの自然治癒力全体を陰陽五行太極論のシステムとしてとらえて、スピリットを最も重要な治療対象としています。

西洋医学と漢方医学の背景理論の違い
 西洋医学は、あらゆる事象(要素)を数値化、定量化して、客観的に分析して、病態の因果関係を明らかにして、治療全体に還元しようとします。これは自然科学の要素還元手法という線形理論です。人体は様々な線形理論が複雑に入り組んで、非線形理論のシステム論で動いています。
 漢方医学は、ミクロからマクロまで、非線形の事象に共通する法則を見いだして、システム論的に理解して、システム論的に分類された生薬(草根木皮の漢方薬)を、システム論を利用して組み合わせて処方にした漢方薬を利用して治療に役立てようという医学です。

漢方薬でスピリットである気力や感性、霊性を豊かに
 心身一如の漢方医学は、陰陽太極論に立脚しているので、『陰は陽の母、やがて陽が陰を統帥する』という法則で、身体を元氣にする漢方薬を続けていると、身体の陰から精神の陽が育ち、やがて育った精神が肉体をコントロールして健康になれる。身体を元氣にする漢方薬は、常に心を元氣にする、心に寄り添う漢方薬でもあるのです。
 ですから、若い人たちは、悩んだり心を煩わせたりして動かないでいるよりも、何でも良いから肉体を動かして、肉体の苦を惜しまずに頑張って動いていると、自然に素晴らしい精神が育っていくものです。
 漢方薬には、体が動けるように氣を強力に補いスピリットを元氣にする働きがありますから、院長の私も、心身がヘトヘトになったり、ヘトヘトになりそうになった時には、いつでも漢方薬を活用して、その効果を実感しています。受験生の頑張りを応援できる漢方薬もありますから、どうぞ、ご遠慮なく相談してくださいね。