漢方と食養による長寿と脳の健康
〜漢方から見る認知症予防と血流の関係〜
日本は世界トップクラスの長寿国ですが、近年は単なる寿命の延長だけでなく、「脳の健康」を保ち、認知症をいかに予防するかが大きな課題となっています。
漢方医学には「気・血・水」という要素が体内を巡るという概念があり、その流れに異常が生じると不調や病気になると言われています。中でも血液の流れが滞る状態を「瘀血(おけつ)」と呼びます。この瘀血を防ぐことこそが、全身の老化予防にとどまらず、脳の老化や認知症の予防において極めて重要なのです。
かつての日本人は、魚食を中心とした和食を基本とし、四つ足の獣肉をあまり食べない習慣がありました。実は、この食生活が長寿と脳の健康を支えていたのです。
哺乳類の中で人類だけが、進化の過程で、脳神経の成長を抑えていた「N-グリコリルノイラミン酸(nGC)」という物質を体内から失ったことで、脳神経系が著しく発達しました。
このnGCは全ての哺乳類の獣肉に含まれているので、これを過剰に摂取すると、異物として血管壁に溜まり、免疫による異物除去反応によって血管の炎症を起こし血管がただれて、動脈硬化を招きます。
この動脈硬化によって、脳の血管が詰まったり血流が悪化したりすることは、脳血管性認知症をはじめとする認知機能低下の直接的な原因となります。
大東亜戦争に負けて、日本の食文化が否定され、欧米化した栄養価の高い高脂肪食の食生活変化によって、高脂肪である乳製品や獣肉の摂取が急増しました。
高齢者の低タンパク血症を防ぐために肉食が推奨されますが、認知症予防の観点からは、肉を獣肉に偏るべきではありません。nGCを含まない魚肉や鶏肉、そして「畑のお肉」と呼ばれる大豆などの豆類から、良質なタンパク質を摂取することが推奨されます。
さらに、脳の健康維持には「油のバランス」が欠かせません。現代人は、陸上の植物が多く作る「リノール酸」を過剰に摂取する傾向にあります。リノール酸過剰は血管トラブルを増やし、炎症性の体質(瘀血)になりやすいことが判明していますが、脳内の微小な炎症もアルツハイマー型など認知症のリスクを高めると指摘されています。
一方で、海魚や海藻、エゴマ、亜麻仁に多く含まれるDHA、EPA、α-リノレン酸は、脳の神経細胞を保護し、認知機能をサポートする働きがあります。これらの良質な油は、リノール酸と拮抗して瘀血を防ぎ、血液をサラサラに保ちます。
日本が誇る豊かな自然の恵みである「海の物」と「山の物」をバランス良く食べる和食文化。この日本古来の食生活を中心に取り戻すことこそが、血流を改善して瘀血を防ぎ、いつまでも脳を若々しくクリアに保つための最良の認知症予防策と言えるでしょう。