#19624
けんご(院長)
キーマスター

 神経発達症(発達障害)の原因として、環境要因が約6割、遺伝要因が約4割、環境要因には妊娠中の心身ストレス、遺伝子発現を修飾するサプリメント類(葉酸、ビタミンB12などメチル基ドナー)、ホルモン様環境物質、薬物、親の加齢などが報告されています。遺伝要因だけでも、関連する遺伝子が200種類以上登録されていて、脳内シナプス発現に関連するものや、セロトニン神経やドパミン神経に関連する遺伝子などの不調が認められることが多いようです。
 神経発達症のうち、注意欠如多動症については、「窓ぎわのトットちゃん」の著者や、ウォルトディズニーなど、じっとしているのが苦手で、アクティブな活動家に多い傾向があります。計画や予定の立たない仕事に喜びを見いだせるという特性もあります。
 神経発達症の中核である自閉スペクトラム症は、社会性やコミュニケーションの発達に問題がありますが、別の見方をすれば、こだわりの強い職人気質、芸術家タイプ、孤高の音楽家、研究者など、独自に道を極めることを得意とする特性があります。
 スペクトラム(虹)なので、特性を生かした職業に着いて、全く普通に暮らせている人もいるし、コミュニケーションが問題となって、社会で自立できず、支援が必要な人もいます。
 神経発達症は、特性か障害かと考えるのではなく、その特性が、社会でうまく適応できず、自立困難な場合に、障害(ハンディキャップ)があると判断します。
 ご質問の趣旨は、障害=病気(disease)かどうか、ということだと思いますが、病気とは特定の病因で生じる疾患ですから、この定義からすれば神経発達症は、疾患単位の呼称ではなく、様々な病因で生じる様々な疾患に伴う脳の特性であり、そのような疾患を伴なわずに、脳の特性だけが認められる場合のほうが多いので、やはり、医学界では、現在のところ脳発達の特性と認識されています。